@article{oai:nagoya-wu.repo.nii.ac.jp:00000838, author = {カミジョウ, ミツコ}, journal = {名古屋女子大学紀要, Journal of the Nagoya Women's College}, month = {Mar}, note = {P(論文), "フランソワモーリャックの「癩者への接吻」に於ける省略点(Les points de suspension)についての考察 モーリャックの全作品の作中人物が,不安定な宙ぶらりんの精神状態の持ち主である事から,この省略点そのものの「宙に浮いた点」(en suspens)という持ち味を存分に生かしうる。それ故処女作「癩者への接吻」にも彼独特の用法が見られるのではないかと思い,それがどんな点か探ってみた。この作品は16の断章から成っており,その中に74コの例が見られた。殊に主人公の内的生活を描く第1章,10章,15章に各々10, 11, 20と最も多くの例が見出された。全ての例を分析した結果を次に述べる。I 伝統的用法(従来の文法家の説より) 1)感動や躊躇の為中断された事を示す例:(8コ)作中人物の気持の乱れ,戸惑い等がわかるもの。2)話相手により中断された事を示す例:(3コ)話している途中で,相手の言葉や否定的動作が入ったために中断されるもの。3)引用の省略を示す例:(17コ) 不必要な湯合,或いは,重要でないために省略したもの。4)次に来る語の注意を引く例:(1コ)相手に次に来る語を考えさせる効果があるもの。5)強い肯定の後の沈黙を残す例:(12コ)話し手が沈黙の内にその気持の余韻を残すもの。6)終止点より長い休止を示す例:(4コ)省略点により話題の移行がわかるもの。II 個人的用法(上記以外の特殊なもの) 1)次元を変える例:(12コ)省略点が語り手の解説の直前に来る事により,読者を作中人物の夢想世界から現実の舞台場面に引き戻す効果を出したり,逆に省略点が自由間接話法の前に来て登場人物の精神界に我々を導く入口だったりするもの。例えば,「彼は見ていなかったが傍で一人の女性の身体が震えているのを感じていた……。司祭が読み続けてくれたならなあ,説教が永久に終わらなかったらいいのに!」(頁59)これは読者に異なる次元内を通過する余裕を与えてくれるので「空間的用法」と呼ぶことも出来よう。2)作中人物の内的動きを示す例:(10コ)省略点が,登場人物がそれ以上耳を貸したくないという時の気特の離れを示すもの,或いは省略点の中で主人公の気持が動く結果,次の語が来ている場合。例えば,「未知の男は,初めはそのまま立っていたがやがて彼女(ノエミ)の方に身を屈め,その手を震わせて……。ジャンは眼を閉じ,ノエミの声をきいていた。(頁140)この省略点に,ジャンの気持ちが投影されているので「心理的用法」と呼ぶことも出来よう。3)時の経過を示す例:(7コ)文脈から時が経っていくのが読みとれるもの。例えば,「鶏が一羽歌った。--ついで小鳥の短いトレモロ--それからまた鶏が……掛時計が30分を打った--鶏が……数羽の鶏が……彼はあの物静かな時刻まで転寝した。」(頁22)この用法では省略点そのものが時の経過を示しているので「時間的用法」と呼ぶ事も出来る。以上の様に,一応分けて考えてみたが,どの例を採っても共通の要因がみられる事がわかった。それは,心理的要因,即ち省略点が読者に登場人物の宙ぶらりんの気持を読みとらせ,その精神状態に近づく可能性を与えているという点である。更に言えば,登場人物の気持の絶えざる流れが,たとえ文は中断されてぱいても最後まで延々と見られる点,即ち省略点が作中人物の全生涯の内的持続を我々に感じさせる役割を演じている点こそ,モーリャック独自のものと言えよう。だからこそ敢えて終止符ではなく省略点を用いて持続の効果を試みたのではないだろうか。空間,時間の制限を越えて流れる永遠の心理的持続を示ず省略点である事にその特殊性があると言えよう。"}, pages = {197--203}, title = {SUR LES POINTS DE SUSPENSION DANS LE BAISER AU LEPREUX DE FRANCOIS MAURIAC}, volume = {20}, year = {1974} }