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内容記述 |
"体幹各位置の角度の傾向,相関関係,体型分類について要約すると次のとおりである.1.体節各位置の角度 体節の側面体,前面体,横切断面体の各位置の角度はばらつきが多く各人各様であった.各位置の角度について平均値で検討すると次のとおりである.1) 側面体傾斜角度(頚部,上体,下体) 体幹の姿勢を表わす側面体の傾斜角度について比較検討すると頚部傾斜角度は13.2°で最も大であり,次いで上体傾斜角度は5.8°,下体角度は5.5°であり,上体,下体の差はわずかであった. 2) 側面体角度 a.乳頭点角度,肩甲骨後突点角度 被服構成において最も大切な位置と思われる側面体の乳頭点では,乳頭上角度が24.7°,下角度が2.8°であり,下角度より上角度の方が著しく大の傾向であった.また肩甲骨後見点では肩甲骨上角度が17.0°,下角度は11.9°でこの位置でも上角度の方が大の傾向がみられた.またそれぞれの位置の上下合計角度で検討すると,乳頭点では27.5゜,肩甲骨後突点では28.9°で肩甲骨角度の方が大であり,欧米の女性に比べて胸部が貧弱であるといわれる日本女性の体型的傾向を示していると思われる.b.腹部前突点角度,殿部後見突点角度 側面体の腹部前突点角度と殿部後突点角度とを比較検討してみると前者は13.4゜,後者は15.0°で腹部前突点角度より殿部後突点角度の方が大の傾向であった.3) 前面体角度(上体脇,腹部高脇,殿部高脇) 前面体の上体脇角度と下体脇角度とを比較してみると,最も大であったのは腹部高脇角度の23.0゜,次いで殿部高脇角度の14.6°,上体脇角度の11.3゜であった.つまり前面体の場合は,上体角度より下体角度の方が大の傾向であった.4) 前面体肩角度,横切断面体刑角度 前面体の肩角度と横切断面体の肩角度について検討してみると前者は27.2゜,後者は4.5゜で頚付根点から前後方向への肩角度より,上下方向への肩角度の方が大の傾向であった.これらの角度は被服の製図における肩線との関係を持つものである.5) 2つの角度を用いて計算により得た上体,下体の各傾斜角度および乳頭点合計角度を除いた体幹全体の角度について検討すると最も大であったのは前面体刑角度の27.2゜,次いで側面体の乳頭点上角度,前面体の腹部高脇角度,側面体の肩甲骨後突点上角度,殿部後突点角度,前面体の殿部高脇角度,側面体の腹部前突点角度,肩甲骨後突点下角度,前面体の上体脇角度の順であり,最小は乳頭点下角度の2.8°であった.なお標準偏差について検討すると,最も大であったのは横切断面体の肩傾斜角度の4.24゜であり,最も小であったのは上体脇角度の1.92°であった.2.体幹各位置角度の左右差(前面体,横切断面体) 体幹前面体の各位置の角度および横切断面体の肩角度は,それぞれ過半数の者に左右差が認められ左右同角度は少なかった. 左右間角度が最も多い傾向を示したのは上体脇角度の50%,次いで殿部高脇角度の42%,前面体肩角度の34%,腹部高脇角度の30%等の順であったが,最も少なかったのは横切断面体肩角度の18%であった。また差の傾向は各位置ともに右角度が大であったが,これは上肢において一般に右ききが多いことに関係あるのではないかと考える.3.体脇各位置角度の相関関係 体節の各位置角度の相関関係について検定を行なったところ,側面体では38項目中7項目に,前面体では55項目中3項目に有意差が認められたにすぎず,婦人の体型の複雑さを示していた.4.体幹の角度による体型分類 体幹各位置の角度を位置別に標準偏差値を用いて,3分類を行ない(1)は小,(2)は中,(3)は大の体型としたが,(2)の体型が最も多く,(1),(3)の体型は少数であった.なおその位置別の3分類を用い,被服構成において最も関係があると思われる位置の組み合わせによる分類を試みたがその結果は次のとおりである.側面体の体幹傾斜角度の組み合わせ,つまり頚部傾斜角度,上体傾斜角度,下体傾斜角度の場合は13種類に分類された.また体幹の上体角度による分類,つまり側面体の乳頭点上下合計角度,肩甲骨後腹点上下合計角度,および前面体の上体脇角度の組み合わせの場合は12種類に,なお体幹の下体角度の組み合わせ,つまり側面体の腹部前突点角度,殿部後腹点角度,および前面体の殿部高脇角度では15種類に分類された.以上体幹における角度の傾向を知ることができたが,更に他の面からの研究を進めて,被服構成におけるダーツの問題や,製図における寸法算出法の基準化を進めて行きたいと考える.終りに本研究に被験者として協力して下さった服飾専攻の学生に謝意を表するものである." |